新・私の本棚 塩田 泰弘 『「魏志倭人伝」の行程と「水行十日陸行一月」について』 2
私の邪馬台国試論 - ふくおかアジア文化塾
九州を知る アジアを知る ふくおかアジア文化塾 2024/07/14
私の見立て★★★★☆ 堂々筆致。疑問点のみ 2024/11/25
◯始めに
本稿は、長年堅実な考察を呈示されている塩田泰弘氏の最新論考であり、古代史に関し重厚な「日本通史」を刊行されている河村哲夫氏主宰サイトの掲載記事であり率直な批評に値すると考え、端緒として瑕瑾を言いたてています。
*また一コマの疑問文
「魏志倭人伝」に記す帯方郡から邪馬台国に至までの行程に関する記述は、上述のとおり漢字が羅列されているだけで、段落や文節の区切りなどはない。このため、どの漢字を以て次の文の始まりとするのか、どの文がどの文を受けての記述であるのかなどは読み方によって異なるのである。
何とも感心しない。氏は、三世紀史官でない二千年後生の無教養な東夷であるから、致し方ないだろうが、ご自分の見識に引き寄せるのは感心しない。
漢文は、古来、漢字が縦書きで続き段落や文節区切りが無い。当然、同時代「教養人」は史官書法を正解できたのではないか。後学中国人は、句読点を足し、附注解釈している。読者が白文を読めないとの逃げは、先賢兄姉の名言の引き写しで氏の責任でないとしても不出来である。釈然たる論考を望むのである。
*『「魏志東夷伝」の距離感』
ここで、「魏志倭人伝」及び「魏志韓伝」の距離観について述べておかねばならない。「魏志倭人伝」は、帯方郡から邪馬台国までの行程について詳細な里程を記している。しかし、この里程については、信用できない、虚妄の数字であるとの批判がある。それは「魏志倭人伝」における国から国までの行程に記された里が、①魏・晋の当時の里と比べてはるかに短いこと、②「魏志東夷伝」の[中略]扶余、高句麗等の国々の国の広さや国邑間の距離等は、当時の魏・晋の里を使っていること、③「魏志倭人伝」における国から国までの里数も現在の距離に換算すると、同じ里数であっても実際の距離はまちまちであることなどがその理由となっている。
やり玉は「風評」である。氏は、「白文」に対する私見に対し、過去多様な風評を提示するが、提示者も「風評記事」の引用もなく氏の所感だけである。読者は、塩田氏の所感に対する批判しか許されないのだろうか。
「信用できない、虚妄の数字である」の断定的風評の根拠が不明である。
①魏・晋の当時の里と比べてはるかに短いこと、と断定的であるが、衆知の如く、「魏・晋の当時の里」を示す公式資料は提示されていない。
②「魏志東夷伝」の[中略]扶余、高句麗等の国々の国の広さや国邑間の距離等は、当時の魏・晋の里を使っていること、
既に、「国の広さ」は里数の里と違い面積単位と明示されている。以下同文。
③「魏志倭人伝」における国から国までの里数も現在の距離に換算すると、同じ里数であっても実際の距離はまちまちであること
意味不明な御意見で、現在の距離に換算とおっしゃるが、「実際の距離」も「まちまち」も、要するに当時の「里」が不明では、換算しようがない。この一点があやふやでは、論証になっていないのではないか。
溯って、伊都国までの本行程は、一千里単位の概数であるのに「詳細な里程」とは、意味不明である。
それにしても、これら三項目は、いずれか成立すれば、全体が有効なのだろうか、それとも、一項目が不成立の時、全体が無効なのだろうか。
*取り敢えずのまとめ
一般論であるが、論考で提示すべき論拠は、一項目で充分であり、数多いのは、それだけ不確かと見られるのである。時に、「蛇足」と諷されるのである。
臆測を持って風評を評価しても、結論が出るはずがない。
ちなみに「距離感」とは、絵画などで奥行きを感じさせる技法であり、このような場で登場すると「蛇足」となりかねないので、御自愛いただきたい。
以上本項の終わり
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