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2024年11月 6日 (水)

新・私の本棚 御覧所収 謝承「後漢書」佚文 史料批判の試み 1/2 再掲

        2020/07/25 2020/08/30 2022/11/23 2024/11/06

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。

〇概要
 謝承「後漢書」史料批判である小論に於いて、同書には、東夷伝がないと評したところ、以下の史料を根拠に、「東夷伝を備えていた」とみるとのコメントがあり、ポツポツ書きためて反論を試みたものです。

 端的に言うと、同資料は、そのような主張の論拠とならないとの結論であり、以下、考証内容を述べています。

〇史料解釈の原則確認
 史料には、確たる根拠を持って編纂され、適確に継承され、厳密に審査された「一級史料」と、それ以外の雑史料があり、雑史料は厳重な史料批判を要するのです。史料批判されていない雑史料は「ごみ」であり、一級史料批判に参加させてはならないのです。

〇御覧所収記事(御覧記事)
太平御覧 時序部十八に次の記事があります。(中国哲学書電子化計劃)
臘:
謝承《後漢書》曰:第五倫,母老不能之官,至臘日,常悲戀垂涕。
      又曰:沛國陳咸為廷尉監,王莽篡位,還家杜門不出。莽改易漢法令。及臘日咸常言,我先祖何知王氏之臘乎?
又《東夷列傳》曰:三韓俗以臘日家家祭祀。
 俗云:臘鼓鳴,春草生也。

 当記事は、類書(百科全書)「御覧」編纂者が発掘した佚文を掲示し「時序」、年間の季節風物などを記した「時序部」の「臘」なる項目の用例、故事を書き出したものと見えます。

〇臘(ろう)の意義~参考まで
 出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 部分引用御免
 [略]臘とは本来、中国において冬至の後の第三の戌の日(臘日)に行なう、猟の獲物を先祖百神に供える祭り(臘祭)の意味である「略」

〇御覧記事解釈
 論者は、謝承『「後漢書」「東夷列傳」』と解しますが、その見方は根拠の無い憶測と見えます。「御覧」で、「又」は、同原典内の小区分か、外部資料か、一定してないので、『「後漢書」「東夷列傳」』との根拠となりません。

 文脈から、謝承「後漢書」は、『外部資料「東夷列傳」』を引用したと思われます。一旦「三韓俗」とし、「又云」でなく「俗云」と書く文脈は不確かです。むしろ、記事全体が、謝承「後漢書」記事であり、東夷用例として『外部資料「東夷列傳」』を挿入したとも見えます。
 つまり、「後漢書曰云々」、「又曰云々」、「又東夷列傳曰云々」の三段構成、あるいは、「俗云云々」を加味した四段構成かとも見えます。要するに、何が何やらわからないのです。

 いや、普通に考えると、この三行は、「謝承後漢書曰」云々に続く「又曰」云々は、引き続き、「(謝承後漢書)「又曰」云々」とあるものが省略されたとしても、依然として「臘」に関する記事なので、「謝承後漢書」としては、別項を立てたとも見うるということです。

〇孤証、それとも不在証明
 そもそも、「東夷列傳」なる夷蕃[伝]が、謝承「後漢書」に備わっていたら、後出史書、類書に多数引用されるはずですが、このように、類例のない孤証となっています。謝承「後漢書」は、東呉系の編纂なので、蛮夷伝には、当時交流が活発であった豊富な西域伝を収録していたはずですが、裴松之が、陳寿「三国志」魏志付注の際に引用したのは、専ら、全文引用した魚豢「西戎伝」だけであり、(存在していれば)先行史料として尊重されたはずの謝承「後漢書」西域伝の引用が皆無なのは、まことに不審です。

 結局、謝承「後漢書」に、夷蕃伝は、全方位で存在していなかったのではないかと見えるのです。と言っても、魏晋代の後漢書稿に蛮夷伝が欠けていても、それは、謝承「後漢書」だけの欠落ではないので、元々、全体として、論議の種になるような蛮夷伝はなかったのでしょう。

 因みに、諸家の中で、袁宏「後漢紀」は、ほぼ全体が継承されていますが、同書は、「列伝」の無い短縮史書であり、東夷伝がないのは、むしろ当然です。また、謝承「後漢書」は、東呉孫権政権下の著作なので、東夷は「圏外」だったのです。

                                未完

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コメント

前略 ご返信いただいていたのに1年余気が付きませんでした。申し訳ありません。

取り急ぎ丁重なるご返信に御礼申し上げます。

p.s.twitter上でもhyena_no_papaの名前でいろいろと雑談をしておりますので、お目に止まりましたらどうぞよろしくお願いたします。

hyena_no_papaさん
 何を書いているかよくわからんとの批判を頂いていたので、つい足が遠のきましたが、よくよく考えると、貴兄は、真面目な論議をされる方なので、回答の揚げ足取りをされないものとして、以下、決然と回答ます。
 「御覧」の成立経過、編集方針を、榎一雄氏はじめ、綿密に諸兄姉が批判されていて、この類書は、史書として扱ってはならないものと解しています。
 今回の事例では、「御覧」が、謝承「後漢書」所引記事を掲示した直後の行に「東夷列伝」とあっても、素直に、謝承「後漢書」「東夷列伝」と解釈することは、できない、してはならない、と言う見解であり、要するに、別資料(信ずるに足る史書)によって確たる裏付けがない限り、信じないということです。
 これは、知る限り巨大類書「御覧」所収記事に付きものの不確かさであり、例として、「梁書」に曰とあっても、どの巻のどこに出典があるのか説明がなくて確認できず、続く行で出典の説明なくずらずら続いているものの、どの件も「梁書」自体の全文検索でヒットしないという事例が、珍しくないというか、ありふれているというか、実に惨憺たるものなのです。
 そのような乱雑な所引記事の事例を、一千巻全体で検証して、「東夷列伝」が謝承「後漢書」の一伝であるとか、でないと言えないとか立証する責任は、そのような無責任な主張を公開する方にあるように思います。
 新説を提起するには、提起者に立証責任があるというのが、当ブログ筆者の見解です。
 色々懲りて勉強したので、無愛想でもご理解いただきたい。
>通りすがりの者ですが、お尋ねがありましてコメント差し上げますさん
>文中
>-----
>「又」は、同原典内の小区分か、外部資料か、一定してないので
>-----
>とありますが、これは実際に『太平御覧』中の用例を検証した結果としてのご発言なのでしょうか?
>お手すきの折にでもご返答いただきましたら幸いです。

文中
-----
「又」は、同原典内の小区分か、外部資料か、一定してないので
-----
とありますが、これは実際に『太平御覧』中の用例を検証した結果としてのご発言なのでしょうか?

お手すきの折にでもご返答いただきましたら幸いです。

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