私の本棚 7 礪波 護 武田 幸男 「隋唐帝国と古代朝鮮」4/5 補追
世界の歴史 6 2008年3月 中央公論新社 単行本 1997/1/10 (中公文庫 2014/05/22)分割再掲 020/06/17 2023/01/01 2024/02/12, 11/01
私の見立て ★★★★☆ 貴重な労作 書評対象部分 ★☆☆☆☆ 未熟な用語、安易な構成、誤解頻発
*カタカナ語の乱用~不可解な逃げ腰非難
本書は、もともと、「世界の歴史」叢書の一巻ですから、中国以外、古代以外の概念が登場しても、ある程度許容すべきかも知れませんが、それは、あくまで対象地域、時代に対して、度しがたい時代錯誤とならないように、慎重に布石した上のことと見えます。
本書の「高句麗と三韓」の「帯方郡と卑弥呼」と題された部分で、それは顕著です。
「彼女の素性」は、と物々しく書き出して、「周知のとおり」と子供じみた前振りに続いて、「鬼道につかえるシャーマン」と「倭人伝」登場者の誰一人として理解できない言葉を貼り付けているのが、その端緒です。古代では、素性(Who)は、家系・出自であり、それを書かずに戯言を書くのは、子供じみています。
もちろん、当時「シャーマン」なぞ存在しないので、不審です。他にも、目障りなカタカナ語は、「タイミング」、「ズバリ」があり、英語起源とは限らない「下品」極まりない、本書にふさわしくない、子供じみた言葉は、本来、書籍編集段階での書換が望ましいのです。
続くページには、「今の世界経済と比較にならない」と普通の社会人にはわけのわからない前置きに続いて、カタカナ語ならぬ、「出超」なる、本書にふさわしくない、子供じみた「片言」です。ひょっとして、「出禁」と取り違えたのかと思えます。(「出超」については、先走って、念入りに論破しています)
*「ネットワーク」の泥沼
続いて、深刻な「ネットワーク」が登場します。
著者によれば、半島には、(意味不明な)「ネットワーク」が棲息している/跳梁跋扈していることになっていて、ことわりなしに「幹線ネットワーク」、「情報ネットワーク」が登場しますが、あきらかに古代史料に書かれていない勝手極まりない妄想であり、それが、ここでだけ引用された「倭人伝」道里記事の勝手な解釈に塗りつけられていて、一体、何のことやら、闇の中に落とされて、そこに、意味不明な「国際性」、「国際ネットワーク」が投げつけられて、誠に困惑するのです。氏は、何処の誰に向かって、仲間内でしか通用しない創作符牒のようなものをばらまいているのでしょうか。
*「帯方郡通交ネットワーク図」の怪
どうにも説明のつかない、絵解きが提示されますが、どう見ても「実施不可能な経路」の「一本道」のいたずら書きであり、しかも、「ネット」(正味/編み目)も「ワーク」(作業/動作)も提案されていないのです。重ねて、「幹線」とか、何とか言われても、古代にないものは「なかった」のです。それは、「ブロードバンド」と賢そうに書き足されても、改善されないのです。まさか、首都圏の通勤電車なみに、ひしめき合っていたのでしょうか。
「韓伝」「倭人伝」に書かれていないと思われる韓国に関する憶測を紙上展開しているのにも困惑します。
陳寿「三国志」「魏志」「東夷伝」記事で、「倭人」交通/輸送に関係しそうなのは、弁辰鉄山から、両郡に鉄材が納入されていたとの記事であり、当然、郡として半島を騎馬ないしは馬車荷車で踏破できる街道を設置し、馬匹による荷物運びを運用していたとわかるのですが、それは、ここには書かれていません。つまり、所定の距離に関所/宿場があって、馬蹄の打ち据えにも対応していたということです。(まさか、馬草鞋履きではないでしょう)「視れども見えず」と言うことでしょうか。
それとも、この一路貫徹で、「半島周回海上輸送」を主張しているのでしょうか。一本道で「ネットワーク」が構築できると信じているのでしょうか。「病膏肓に入る」、つけるクスリの無い迷妄かと見えます。
未完
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