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2024年12月 8日 (日)

15. 事鬼道 「鬼」とは何だったのか 補追

                2014-05-05 12:00:00 補追 2024/10/19, 12/08
*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。

*倭人伝考察
 「事鬼道能惑衆」
 卑彌呼自身の行いとして知られているのは、此の六文字です。
 あくまで根拠のない所感ですが、卑彌呼は、後年の神社に見られた巫女(みこ)のような存在ではなかったかと考えています。

 卑彌呼は、男王の外孫(そとまご)、つまり、倭国有力者の娘(女)が嫁ぎ先で産んだ娘(子)、つまり「女子」として生まれたのですが、一家の季女(末娘)、ないしは、長女であったため、生まれながらに、神の婢(はしため)として、生涯不婚と定められたため、「卑」を名のっていたとも見えます。つまり、「卑」は、謙(へりくだ)っているのであり、決して、卑しめられているのではないのです。

 つまり、仏教で云う在家出家に近い形で、家族と別離し、いわば、俗塵を離れて清浄な生活を送って、人々から神意を問われたときは、時には、別室に籠もって祖霊(父祖の霊)と交流して神託を草したものと見ています。その際に、時には、神託を形で示すために、骨を焼いて卜したのでしょう。
 卜して得られるのは、骨に刻んだ誓文に対する神意を示すひび割れであり、願文を書くのも、神意を示す甲骨文字を解読するのも、巫女の務めであったのです。つまり、卑彌呼は、甲骨文字に関する深甚な教養を有していたと言うことを示唆しています。
 時に、巫女は、人前で神懸かりしてお告げを述べると考えられていますが、まずは、巫女は、別室で神懸かりするものですから、たいへんな勘違いが出回っているのです。
 まして、甲骨文字の示す神意は、そもそも、願文の諾否を応えるものであって、思わしくなければ、願文を変えて問い直すこともあるように、目覚ましいお告げをするためのものではなかったのです。

 以上は、太古以来の厖大な甲骨文字史料と金文文書に始まる古代史料を読破して、太古以来の中国「文化」を深く理解した白川勝師の多数の漢字学著書から学んだものであり、晩学の素人でも、ひたすら学び続けることで、見識を高めることができたという証しとして、一文を草したものです。

 従って、倭王として共立されて女王として君臨しても、実際は、巫女の時代と変わっていなかったと見ています。

 当時の諍いごとを案ずるに、漁場や猟場の争い、耕作地水利の争いなど、地域集団の利害が競合し、リーダーも、互いの面目を保つために、譲りがたい物事があり、武力闘争に陥り共倒れになるのを避けるには、権威有る第三者の仲裁を受けることが、「持続可能な地域社会」を維持するために必要であり、そのためにこそ、公平な神意に頼ったものと見ています。

 魏使から見ると、そのような神意による仲裁機能は、中国に於ける神卜のあり方とは異なるものであり、「事鬼道能惑衆」、つまり、祖霊(死者の霊)に事えて衆を惑わしている(感動させている)としか見えなかったのでしょう。

 黄巾反乱を起こした太平道や漢中の五斗米道集団のような強力な邪宗淫祠の宗教集団の横行を見ていた魏使には、このような穏やかな采配は、理解できなかったのでしよう。 

以上
追記 2024/12/08
 史料の落ち穂拾いとして、史記夏本紀から禹の十三年にわたる献身記事を引用します。
 致孝于鬼神卑宮室
 先ずは、鬼神に事えるのは、「考」であり、つまり、祖先の霊に事えることを記していると考えます。また、「卑宮室」の解釈は、かなり困難ですが、「宮室を卑しくする」とは、宮室を華美にせず、治水に注力したことを言うように見えます。
 「陳寿」は「魏志倭人伝」に、いわば「卑弥呼」小伝を構成する際に、当記事を念頭に置いたことは確実と思われます。敢えて、その真意を探ると、曹魏明帝が、戦時下に於いて、兵器に投入すべき貴重な銅材を装飾材に消費し、さらには、国務を維持する責務を負っている官人を動員してまで、新宮殿を造営したことを謗(そし)っているのかも知れません。
以上

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