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2024年12月21日 (土)

新・私の本棚 牧 健二 「魏志倭人伝正解の条件」1/3

史林五三巻五号 1970年9月 (京都大学学術レポジトリー)
「魏志倭人伝正解の条件」
*私の見立て ★★★★☆ 大変重大な資料 2019/11/05 再掲 2024/03/22, 12/21

*加筆再掲の弁

 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。

◯はじめに
 当史料の評判らしいものは聞いていましたが、論考の実見は初めてです。文献解釈の王道を説き、着実に実行し、学ぶべき展開です。論考の前提となる基本的記事解釈などには、多々異論がありますが、何よりも大事なのは、考察の基本方針の厳正さです。(本論部分論評は、ここでは割愛します)
 世上、聞きかじりで批判する方がいらっしゃるので、当然/自明のことを前置きします。
 以下、述べるのは、以下に引用した牧氏の学術的な提言に喚起された議論であり、抄録引用した牧氏の見解全体について、論じているものではないのです。

*抄録引用
 魏志倭人伝の解釈について、私は先に『日本の原始国家』を公にし、倭人伝は前漢書の書例に従うて書かれたものであって、「自㆓女王国㆒以北」は対馬国から不弥国までの六国の地方で、その南に女王国即ち倭国連邦があり、倭国の「女王之所㆑都」が邪馬台国であることを説いた。また右の書例に基づいて邪馬台国は筑後の山門郡を、投馬国は日向の妻を、故地とすることを説いた。なお従来の邪馬台国と女王国とを同視する定説が後漢書倭伝に由来する謬見であることを論じた。然るに今日この定説は依然として行なわれ、且考古学者の間では大和説がなお有力であり、また伊都国から邪馬台国までを陸行一月とする倭人伝の記載が依然曲解又は虚妄視され、更に邪馬台国は誤で邪馬壱国が正しいという説が現われたりしているので、ここに其後の知識と省察とによって管見を補強しこの倭人伝正解の条件を書いた。

*不朽の提言
 発表時点の最新見解であり、榎一雄氏のいわゆる「放射状道里解釈」及び古田武彦氏の「邪馬壹国」提言を承知した上で、以下の提言を進めているのです。以下で論じているのは、この提言です。勘違いする方がいるので、再三注意喚起します。

 「ここにいたってわれわれは倭人伝の原文を正確に読む方法について、これまでの読み方に間違ったところがないかどうかを考える必要に迫られるのである」と冷静に問い掛けた後、以下提言されています。

 「倭人伝を書いた当人である陳寿は、もちろんそれほどむずかしい文を書いたとは思っていなかったのに相違ありません。彼は彼として無理のない自然な表現法で倭人伝を書いたのに相違ないのですから、倭人伝を正しく読むがためには、まず筆者陳寿がいかなる表現法を用いて倭人伝を書いているかを知らなければなりません。その表現方法をわれわれはまだ知らない」以下略)

コメント 同感です。

*提言の適用例
 ある意味、いわゆる「通説」信奉者の方々に蔓延している「倭人伝」への偏見との観点の相違は根深いので、ここで翻意していただくのは無理な相談ですが、無駄を承知で言っておきます。

*陳寿の常識確認
 陳寿が道里記事を書くとき、帯方郡から狗邪韓国に続く街道、官道があることは承知していましたが、海に出て海岸沿いに南下する、そして、東に転じる不法な経路は、全く認識に無かったのです。(史官として認識していないことを書くことは、一切ないのです)(説明がくどくなって申し訳ない)

 そもそも、世人には、公式史書に魏使の行程報告をそのまま載せているという感覚自体が、既に「的外れ」であるとの意識(自覚)が無いから、いくら当方が官道の理念を元に諄諄と説いても、理解されないかも知れません。

 倭人伝は、厳正な公式史書たる魏志の東夷伝で、初出の蛮夷の国を紹介しているから、帯方郡からの官道道里を明記しなければならないのです。 史官は、士人であるので、史官の責務に殉じるものであり、つまり、何としても、時に身命を賭して果たすものです。(説明がくどくなって申し訳ない)

 これは、同伝に続いて追補の魚豢「魏略西戎伝」の編纂方針でもあります。

                                未完

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