新・私の本棚 安本 美典 「魏志倭人伝」 「現代語訳」1/2
「魏志倭人伝」「最新邪馬台国への道」(1998梓書院)より Rev.2 2024.8.6 初稿2025/04/06
◯はじめに
本件は、「邪馬台国の会」サイト「解説」の記事である。安本美典氏の著書の引用と見えるが、別サイトで参照していて信頼されていると見えるので、率直に批判したいとしたものである。陳寿「三国志」魏志「倭人伝」の紹興本依拠とのことである。
*本文概要とコメント
「魏志倭人伝」の原文は、句読点もなく、章や節などもわけられていない(が)中略、三章五十節にわけ、見だしもつけた。
このように章や節にわけてみると「魏志倭人伝」はつぎの三つの章にわけられるような、かなり整然とした構成をしていることがわかる。
第一章 倭の国々 第二章 倭の風俗 第三章 政治と外交
中略 陳寿は、諸種の資料を 中略 整理したうえで記したとみられる。
1.倭人について 倭人は、(朝鮮の)帯方(郡)(中略)の東南の大海のなかにある。山 中略 島によって国邑中略をなしている。
「倭人は、帯方東南に在る。大海中山島に在って国邑をなしている」が本意と思われる。「倭人伝」は、「倭人在」を述べ「大海在」を述べない。因みに、「海中」は、今日で言う「海上」である。
2.狗邪韓国 (帯方)郡から倭にいたるには、海岸にしたがって水行し、韓国(中略 )をへて、中略 倭からみて北岸の狗邪韓国(中略)にいたる。
「海岸にしたがって水行」は早計に過ぎ、これでは、三韓を歴訪できない。郡から七千余里の陸上街道で狗邪韓国の大海北岸に到ると解すべきである。ここまでは、郡管内なので淡白なはずである。
それはさておき、「郡から倭にいたるには」と文を書きだして、いきなり「狗邪韓国に到る」で結んでは 文になっていない。
「郡から倭にいたる」を 小見出しと見立てて一旦締め、続いて「海岸から渡海するのを水行という」との定義を挟んだ後、「以下、区間の記事を書く」示唆してご指摘のように、個条書き風記事としているものと見える。ご一考いただきたい。でなければ、延々と文が続いて、伊都国に着く頃には、文頭は、巻き取られていて(高貴な)読者には何の話かわからなくなるのである。激怒を買いかねない。
陳寿は、物書きの専門家であるから、何の構想も無しに書き連ねることはないはずである。
3.対馬国 中略 はじめて一海をわたり、千余里で対馬国にいたる。方(域)は、四百余里。中略 道路は、禽と鹿のこみちのようである。中略 南北に(出て)市糴(中略)している。
ここから、倭に至る行程が語られるのである。予告したように、狗邪韓国の海岸から「水行」、つまり、渡海するのである。
本意は、『倭地では、中国では馬車が往来すべき道路(公式街道)が「けものみち」である』の断言と見える。
また、「方四百里」を「域」、面積表示と明快であるが、何の「域」か不明である。話せば長いので、どけておく。
また、単に南北市糴と思われる。わざわざ出ていかなくても、客が来るのである。
4.一支国 また南に一海をわたること千余里、名づけて瀚海(中略)という。一大国(中略)にいたる。 中略 方(域)は、三百里ばかりである。中略 又南北に(出て)市糴している。
「一支国」と速断するのは、早計である。また、「瀚海」は対馬―一大間のみである。
「方三百里」の解釈は、先例に同じ。「南北市糴」の解釈は、先例に同じ。
5.末盧国 中略 千余里で末盧国 中略 みな沈没してこれをとる。
末盧国を後の肥前国松浦郷とは早計である。本意は「濱の近くにまで」である。因みに「沈没」の本意は、身を屈める意味である。
6.伊都国 中略 伊都国を後の筑前怡土郡とは早計である。
7.奴国 中略 奴国を後の筑前那の津とは早計である。
8.不弥国 中略 不弥国を後の筑前宇瀰とは早計である。
9.投馬国 中略
10.邪馬台国 南 中略 邪馬壹(中略)国(中略)にいたる。女王の都とするところである。水行十日、陸行一月である。中略 七万戸ばかりである。
「邪馬壹」を「邪馬臺」の誤りとするのは、早計である。「邪馬臺」を「やまと」と発音すると決め込むのは、おそらく早計である。
「女王の都とするところ」とは、早計である。「女王之所」つまり居処、「都水行十日陸行一月」(全日数)と仕切るものではないか。
また、「七万戸ばかり」は、仕切り直して、全戸数総計と解すべきではないか。文書行政の本拠である「女王国」が、戸籍の無い未開の戸数管理の筈がないのである。
未完
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