私の本棚 51 水野 祐「評釈 魏志倭人伝」 6/10 2025
雄山閣 新装版 2004年11月 (初版 1987年3月)
私の見立て 満票 ★★★★★ 『「倭人伝」は 唯一無二の史料』 2016/06/18 追記 2020/06/07 2021/07/17 2024/04/21 2025/12/06
*加筆再掲の弁
最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。
*印刷刻本技術の進化
刊刻事業は、木版版刻技術とその版木で多数の均質な「単葉紙」に印刷し装幀製本する技術であるが、南宋再興期は、国家事業が整わず民間に依託したと見える。それは、印刷用紙製造技術も、同様と見える。北宋初期に完成した印刷製本技術は、帝室尚方が成し遂げた美術工芸であったが、北宋期に経済活動の盛んな長江流域に興隆した地域産業が、南宋創業時の国家事業を受託したことから技術的に進化して、民間事業として開花したと見える。
「咸平本」断簡と「紹凞本」を比較すると、「紹凞本」で本文一行に対し細字で注釈二行を収める「割注」は、「咸平本」に見られず、注釈は、改行して同行格で書き継いでいるのが異なる。つまり、木版印刷技術の進歩で、細字で版を刻み、それを忠実、かつ迅速に印刷する技術が完成した。
古来、発展的改善が「進化」であったが、遥か後世、欧州起源ダーウィン「進化論」により「生存競争による旧種駆逐、新種繁栄」が「進化」との新解釈が登場したが、本来、「進化」は「目覚ましい進歩」である。いや、当ブログでは異界の「躓き石」に属する余談であった。
*「紹熙本」談義
三国志で言うと、「紹凞本」とは、南宋紹凞年間に審査、校正が完了し、テキストが確定したことから命名されたのであり、公開年間は、関係無い。
ついでながら、当時最高の人材を投入して編集し、多大な費用を投入して、重複と見られかねない改訂版を起こしたと言うことは、当時の権威者が、「紹凞本」に「紹興本」に勝る(とも劣らない)価値を認めたと言う事であり、現代出版物の絶版、改版とは、重みが違うのである。
推測するに、侵攻を免れた「蜀漢」旧地成都付近の蔵書家から良質写本の提供があったと見える。北宋刊本が、北宋の天下の極端である益州成都まで流布していたのである。恐らく、食貫弐先行する劉昭時代以来の文書が、益州に秘蔵され、優れた写本製本が行われていたことによるものと思われる。あわせて、金軍の怒濤の進行も、益州には、遠く及ばなかったということを示しているようである。
*「紹凞本」所見の由来
以上の議論は、尾崎康氏の名著「正史宋元版の研究」(汲古書院 1989年)の潤沢・深遠な書誌学的著述を大いに参考としたが、ここで附した「紹凞本」擁護の所見は、「紹凞本」起用の背景推察共々、当ブログ筆者の私見であり、異論は、当方に帰すべきである。尾崎康氏は、紹凞本について、否定的とは言わないまでも、消極的な意見に留めるべく「使命」を帯びていたようであるから、歯切れが悪いのは仕方ないと見て、勝手に代弁したものである。
*「倭人」論再開
さて、本文論義に入ると、記事の冒頭に「倭人」の二字が置かれている。
著者である水野氏は、これは、唐代以前の「日本人」呼称であるが、自称ではなく中国人が与えたと解している。因みに、三世紀論で、「日本」は、時代錯誤と批判されるが、ここは、少し緩い見方で見過ごすことにする。
氏の見解に対し、当方も、ほぼ同感である。古代に於いて、「日本人」の側には、漢字について十分な知識はないから、いずれの時代の、どんな由来か、知る由もないが、中国からの頂き物の可能性が高い。但し、それなりに由緒のある命名であり、性急な思い込みは後回しとしたいとしたものである。
未完
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