歴博談議

国立歴史民俗博物館(通称:歴博)は、広大な歴史学・考古学・民俗学研究機関です。「魏志倭人伝」および関連資料限定です。

2025年3月24日 (月)

新・私の本棚 NHKBS「古代史ミステリー 第2集 ヤマト王権 空白の世紀」1/2 更新

私の見方 ☆☆☆☆☆ 果てし無い浪費の泥沼 豪勢な金継ぎ骨董 2024/03/27     2024/04/02 2025/03/24

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。

◯番組紹介引用
詳細
古代史の謎を解くカギ「空白の4世紀」に何が!?“国宝級の発見”東アジア最大の「蛇行剣」や前例なき「盾形銅鏡」が明かす驚きの技術革新。史上初の統一国家「ヤマト王権」の力の秘密は?韓国で見つかった“謎の前方後円墳”。風雲急を告げる東アジアの動乱。危機に挑む「倭の五王」の秘策は?宿敵・高句麗との激闘の行方は?最新科学や実験でダイナミックな戦略を徹底検証。私たちの国のルーツに迫る壮大なミステリーの幕が開く

◯はじめに
 毎度の苦言だが、「ルーツ」なるカタカナ語は深刻な誤解を抱えている。
 この語句をタイトルに綴った名作文学は、アフリカで平和な暮らしをしていた男性が、邪悪な奴隷商人に拐帯されて家族から切り離され、アメリカ南部の綿花プランテーションの奴隷労働を終生強制されたが、その子孫が、アフリカの土地で先祖の故郷を発見し、親族の子孫と会合する大きな物語であり、アメリカの奴隷制度の忌まわしい歴史を伝えているから、安直な転用は「不適切」と言える。
 それとも「私たちの国」は、異境から誘拐され到来したとしているのか。

*淡白の弁
 前回の第一集は、陳寿「三国志」なる確実な中国史料の一角である「魏志倭人伝」のあからさまな否定作戦(Negative Campaign)で3l、無理なこじつけがやたらと目立って、批判の甲斐があったが、今回は、対象年代の中国史料が乏しく内容空疎で有るため、言いたい放題になっていると見える。当方も、当時代は、史料不足で圏外となっているので、熱が入っていない点はお詫びする。何しろ、前回批判した後が、黙認/容認と取られると不本意なので、批判論調を維持したものである。

*継ぎ接ぎ細工
 それはそれとして、今回のお話は「空白の四世紀」と称して史料の無い事態であって、空白のキャンバスに大胆な絵図を描いているから、せいぜい、夢物語なのだが、乏しい遺物証拠に、新作を大胆に継ぎ接ぎして、大層な絵物語を提供しているが、制作者の想像力貧困/無教養が眼について寒々とした。

*劉宋幻想
 言い古された南北風土差であるが、南朝領域では騎馬疾駆できないので、高句麗蛮族が南下しても戦力にならない。また、北魏は高句麗の西にあり、長年抗争の果てに、高句麗が臣従したから、とても友好関係とは言えない。
 東呉孫権政権は、大型海船で数千の兵を遼東半島まで送ったが、劉宋は、中原の長安、洛陽の奪還を図った北伐で国力を消耗していて、百済救援どころではなかったちなみに、西晋滅亡時、百済に遺臣が亡命して、政権高官となっていたから、百済は「法と秩序」が整った、東夷随一の文明国になりつつあった。
 番組から隠されていたが、倭国は、宋朝に百済支配権を請求して拒否された。百済は、司馬晋を継承する中原政権と自認していた劉宋に取って、親交の深い重要属臣でもあり、倭国の支配圏を認めるなど論外だった。
 西晋滅亡の際に、多数の官人が百済に亡命して、格別に厚遇されていたから、さながら「小中華」であり、曹魏に優遇されながら臣従を維持しないで、帯方郡を援護することもなかった「倭人」は、むしろ、百済の臣下であり、同列にならないのである。

*高句麗南下の戯画
 高句麗は、黄海岸「制海権」を握って、遼東半島から中国東莱への交易を独占しようとしたらしいが、と言って、嶺東の荒れ地、新羅領域制覇を目指したのではない。そもそも、小白山地に遮られているので「東アジア動乱」など夢でしか無い。
 なお、高句麗は、楽浪/帯方郡の滅亡後、半島南部、韓半島に進出しようとしたとは言え、小白山地を越えた「嶺東」は、弁韓の地とは言え、平地が乏しく、また、洛東江の流れが深いために灌漑が困難であったため、水田稲作が展開できず農作が低調であるため、駐屯維持ができず早々に撤退したはずである。確実な史料がないため、考察が困難であるが、四世紀当時、高句麗に南下の意志は乏しかったと見える。また、倭国としても、小白山地を越えて西方に転じて黄海岸に出る行程は、百済と紛糾するために、維持できなかったと見えるのである。
 もとより、高句麗は、北朝を形成した魏(北魏)に服属していたので、南朝に追従していた百済と対抗していたのである。

 当方において、地域、時代において圏外であるため避けられない「臆測」はさておき、当番組の描いた図式は、地図錯誤とあわせて、無残な時代錯誤と言える。

*「倭讃」談議
 それにしても、中国の天子に対して「倭讃」と称するからには、「親魏倭王」金印か同等の印綬を提示したはずである。常識的には、既に南方で再興した司馬晋、東晋に遣使していたはずである。その時点では、新羅道内陸行と旧帯方郡と山東東莱の渡船が健在で、さほど困難な遣使では無かったようである。

 このような前提から、古田武彦氏は、「邪馬壹国」王統が「倭国」に順当に継承されたとみて、「九州王朝」の基礎としたものである。すくなくとも、中国史書の論理から、そのような推定を否定するのは相当困難(実質上、不可能)と見えるが、当番組は、素知らぬ顔でとぼけているのである。勿体ないことである。

                                未完

新・私の本棚 NHKBS「古代史ミステリー 第2集 ヤマト王権 空白の世紀」2/2 更新

私の見方 ☆☆☆☆☆ 果てし無い浪費の泥沼 豪勢な金継ぎ骨董 2024/03/27     2024/04/02 2025/03/24

*加筆再掲の弁
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*遺物の謎
 当番組で、盾型櫛と銅鏡は、それぞれ発掘遺物が示されたが、「詳細」で壮語された「盾形銅鏡」は、ついぞ見当たらなかった。不思議である。

*虚言連発
 それにしても、「秘策」や「戦略」など、厳重に秘匿されたはずの軍事機密が、ぞろぞろ提示されるのは奇異である。誰が、なぜリークしたのだろうか。
 ちなみに、蜀漢宰相となった諸葛「臥龍」亮が、流浪の君子劉備に提示したという「天下三分の計」戦略は、陳寿が蜀志に収録したから、何れかの時点で公開されたのだろう。一方、『国内史料に見えない「倭の五王」』の「戦略」が、どのようにして制作者の知るところとなったのか不明である。

*書かれざる偉業
 それにしては、「倭の五王」南朝遣使の不朽の偉業が、国内史料に記録されてないのはなぜだろうか。無理やり「外交」したのなら文書記録が大量に残るはずである。広開土王碑をネタにした海外派兵も同様である。それほどの大事業が、国内史料に何も記録されていないのは、なぜだろうか。
 制作者は、同時代、王の高官に単数、または、複数の中国人がいて、国書起草以外にも記録文書の整備にもあたったと見ているが、なぜ、記録継承がなかったのか不思議である。「倭の五王」の墳丘墓に墓誌がなく、厳密な記録もないのは、なぜだろうか。中国人が「史官」として臨んでいれば、絶対起こりえないのである。

*「島泉丸山陵」の奇観
 ついでながら、有力天皇陵とされている「島泉丸山陵」が、「前方後円墳」で無いのは新作空撮までもなく公知である。なぜ、そのような不確かと見える比定が、NHKの教養番組に注釈無しにまかり通るのだろうか。不思議である。

*記録の不在
 国内権力にしたら、重要な史実が国内史書に記録されてないのは、権力継承がなかったからではないか。反逆者が滅ぼされれば、公文書は全て破壊されるのがならいである。暴力的な政権交代が秘されたのだろうか。

*学芸会ごっこ
 今回は、史料紹介が乏しく遺物も断片的であったためか、埋め草に、戦闘シーン、中国/高句麗/倭国王宮の寸劇など、とんだお芝居の蒸し返しが連続している。衣装、セリフ、舞台装置が、卑彌呼時代以来のベタベタの使い回しであり、まるで、学芸会寸劇で傷ましい。そう言えば、唐突な「専門家」寸劇も、名出し顔出ししているのに、棒読み風で勿体ない。「薄謝」戦術なのかな。

*不思議な胡服騎射
 画面に提示された高句麗の騎馬軍団は、弱弓「流鏑馬」で不思議である。当たれば痛いだろうが、馬上から打てる矢の数は知れている。まして、すれ違いざまとなれば、的を捕らえて打てる数は限られている。敵だって弓矢をもっているから、騎馬武者でなく馬を狙い撃てば、まず外れっこないはずである。もちろん、「歩兵」は盾も持っているし、更に言うと、ご自慢の鉄甲槍部隊に対して効くのであろうか。「矛」と「盾」の故事もあるくらいである。

◯まとめ~金継の無理
 いや、結局、当番組は、三世紀の「倭人」が、「巨大墳丘墓」政権と「倭の五王」政権を歴て、九世紀の平城京に続いた』との主張だろうが。滑らか(Seemless)な推移でなく、経過部分が穴ぼこなので、繋げるために、新作物語の破片を埋め草としてつないで、隙間を漆金箔の金継ぎした苦心の作と見えるが、「金継ぎ」の妙技でも、わずかな破片の大胆つなぎの無理は癒やされていない。
 要するに、大騒ぎして見せても、何も立証されていない虚夢のようである。

 公共放送が、このような法螺話、与太話を、多額の制作費を投じて制作し、堂々と公開するのは、誰の「戦略」に従ったのか不明だが、後生(若者)に負の継承とならなければ幸いである。

                                以上

2025年3月23日 (日)

新・私の本棚 NHKBS「古代史ミステリー 第1集 邪馬台国の謎に迫る」 1/10 更新

私の見方 ☆☆☆☆☆ 果てし無い浪費の泥沼 底なしのてんてこ舞い 稚拙な弥縫の流沙 2024/03/18, 03/28 2025/03/23

*加筆再掲の弁
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 先ずは、NHKが公開している番組案内である。
 あまりひどいので、視聴前に別記事で一報したが、実際に番組を見たら、下には下があるの体たらくで、率直に苦言を呈するものである。

-番組案内の引用である。
古代史ミステリー 第1集 邪馬台国の謎に迫る
初回放送日: 2024年3月17日
 私たちの国のルーツを解き明かす壮大なミステリー!古代史の空白に迫るシリーズ第1弾。謎の女王・卑弥呼の邪馬台国はどこにあった?発掘調査と最新科学が突き止めた新事実を紹介。人骨やDNA分析から見えてきた激動の東アジア。「三国志」に秘められた卑弥呼のグローバル戦略とは?最強の宿敵・狗奴国とのし烈な争いの結末は?未知の古墳のAI調査や大規模実験で徹底検証!日本の歴史を変えた卑弥呼の波乱万丈のドラマを描く!
-番組案内の引用終了である。

◯はじめに
 当番組は、古代史報道は「創作より奇想天外」であるという一例である。NHKは、与えられた虚構(ロマン)画像化の使命が達成困難なとき、何処かから予算を取り付けてでも、途方も無い虚構画像を作成すると経営的に決断したようである。かくして、NHKの制作陣は、投下費用をそれぞれの制作班に振り替えて、放送芸術の持続的発展を期したようであるが、以下に示すように、報道ならぬ「ロマン」は、学術的裏付けの乏しい「プロパガンダ」と化し、教養/報道番組の域を脱した浪費となっていて、このような費用支出を正当化するのは、至難と見える。会計監査をどう言い逃れするつもりかは知らない。

 すくなくとも、当方は、会計監査を業としていないので、諸説紛々たる古代史論で公共放送が「一説」に偏重したことをどのように正当化するかに、多少の興味はあっても知りたいとは主張しない。
 以下、番組を流し見しながら、速報/速評を試みたので、誤解/事実誤認があれば指摘いただきたい。また、再放送で確認いただければ幸いである。

 ちなみに、紹介した「番組案内」は、無残な錯誤の連発であり、NHKには、校閲部門がないのを偲ばせるのである。
 「国のルーツ」とは、いきなり語彙錯誤である。「卑弥呼の邪馬台国」とは、驚異の所有格であるが、女王は、せいぜい君臨していたのであり、「国」を所有していたわけではない。「激動の東アジア」などと大ぼらであるが、実際は、せいぜい、遼東界隈の話しである。後日追求するが、「グローバル」とは、これまた放言である。「倭人伝」にしか登場しない南の隣国「狗奴国」を最強の宿敵としているが、たまたま、女王の治世で不和だったのが、深刻な抗争に発展したと云うだけである。どうやら、女王「共立」に参画していなかったようであるが、所詮、コップの中の嵐である。三世紀当時の地域の実体は不明確であるから、「徹底検証」など、痴人の酔夢ではないか。トドメの「日本の歴史を変えた」とは、病膏肓である。三世紀当時、「日本」はまだ覚醒していない。そして、「歴史」は、文字記録として延々と蓄積されたものであり、現代人が、お気軽に改竄できるものではない。

◯各論
*誤解で導かれた虚報の世界開幕
 導入部で示される「邪馬壹国」と原史料を表示しつつ「ヤマタイコク」と発音する詐話紛いの手口と、勝手に「倭人伝」記事を解釈して、「邪馬台国」を「海の中」との決めつけたのは、まことに胡散臭い出だしである。
 ついでに言うと、「倭人伝」は、正史に明記された自明の史料名で、中国史学界で通用している。NHKには公共放送としての自尊心がないのか。
 三世紀古代史談に、無神経に「日本」と称して不吉である。NHKは、三世紀に九州で自立した「邪馬台国」が、八世紀に纏向地域を包括して「日本」と長大したと本気で信じているのか。「諸説あり」では済まないと思う。
 国内史学では、「偏見」を避け、「日本列島」なる中立概念を提起している。
 NHKには報道者の良識は無いのだろうか。

*「大規模な建物群と厖大な人物群」の壮大な時代錯誤
 三世紀古代に、堂々と開陳される大規模な建物群と行き交う厖大な人物群の時代錯誤、拙劣な虚構「画餅」に恐れ入る。建物は、南北線基準だろうか。時代に先駆けて、瓦葺きと見えるが、この時代、どうやって瓦を焼き上げ、どう足場を組んで葺き上げたのか。
 次世代から、絵空事と言われない堅固な「画餅」を望むものである。

                                未完

新・私の本棚 NHKBS「古代史ミステリー 第1集 邪馬台国の謎に迫る」  2/10 更新

私の見方 ☆☆☆☆☆ 果てし無い浪費の泥沼 底なしのてんてこ舞い 稚拙な弥縫の流沙 2024/03/18, 03/28 2025/03/23

*加筆再掲の弁

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*巨大瓦屋根の不思議
 ぱっと見であるが、降水の多い土地で雨仕舞い不備の大型建物は持続できたのだろうか。雨樋や排水口はどうしたのか。「画餅」批判が嫌いなら考証すべきである。三世紀、四世紀にこのような百年ものの大型建物を築けたのに、飛鳥時代は、二十年持たない萱葺きや板葺きに堕したのか。
 「虚構」は、専門家が、最先端の設計技術と工学技術を駆使し、途方もない費用を確保して細部に到るまで考証するはずが、なぜ使い回したか。困ったものである。
 毎年投入される多額の研究開発費は、このような虚構構築に費やされているのか。全国各地で考古学研究に勤しんでいる研究者に報いるべきではないのか。

*無謀な傾斜地運河
 虚構と言えば、これまでにも、奈良盆地三輪山麓の水量の乏しい渓流に、動力駆動の閘門無しに実現困難な傾斜水路運河を大々的に描いて見せて、あきれたものであるが、この手の病(やまい)は、草津の湯でも癒やしがたい(Die hard, Die harder, Die hardestか)ようである。
 要所で、女王が、高度な建築技術が偲ばれる宮室にあって、史料記事に反して多数の臣下を従えて胡座するのは、史料に反する大嘘である。公共放送たるNHKには、「フェイク情報」の拡散防止に努める良心はないのだろうか。

*不可能な銅鐸粉砕
 巨大銅鐸を瀬戸物のように粉砕するのは、既に「石野博信氏主催のレプリカ銅鐸破壊実験」で不可能と実証されたのをご存知ないのであろうか。NHK番組で堂々と公開されているから、知らないはずはないが、今回は、粉砕可能なレプリカを高度な技術で作成したのであろうか。

*年代鑑定の錯誤
 「遺物の年代鑑定が、一年単位で特定できる」というのは、素人騙しの言い逃れに過ぎない。予算申請時には、お役人に通じたろうが、素人眼にも誤魔化しに過ぎない。「年輪は一年単位」で形成され、データ解像度の限界となるという事実を、もって回って述べただけである。とんだ恥かきである。
 こうした、年代鑑定は「ヒューマンエラー」の積層に依存している。「科学はウソをつかない」と言っても、それは、観測結果の単純な表明に限定される。現実には、「結果」がスポンサーの意に沿わないと以後の依頼が途絶えて、収入源を喪う恐怖があるから、研究機関は、薄氷を踏んでいるが、蛮勇を持って「馮河」など怖くないというのだろうか。所望の結果が出せない鑑定者は排除しろという天の声が聞こえそうである。

*お手盛り鑑定の悲劇
 それにしても、ここで示されたのは、私利私欲でなく、また、研究機関の党利党略でなく、古代史学の不朽の基礎となる「結果」の獲得であれば、強引な結果誘導のない客観的研究成果批判が必要かと、素人ながら思う。

*百年遺産の願い
 常識であるが、「いかなる権力も不滅ではなく天命を喪えば下野する」のが、歴史の教えである。その際に、回示された「年代鑑定」は、素人目にも、見え透いた「底意を暴露されて批判の的になる可能性がある」のは当然の理である。その時、関係者は、「記憶・記録に無い」と弁明し、改竄の責めは実務担当部門の担当者に降りかかる。何処かで聞いた気がしたら空耳である。

 くれぐれも、後世の批判に耐える業績を画していただきたいものである。

                                未完

新・私の本棚 NHKBS「古代史ミステリー 第1集 邪馬台国の謎に迫る」 3/10 更新

私の見方 ☆☆☆☆☆ 果てし無い浪費の泥沼 底なしのてんてこ舞い 稚拙な弥縫の流沙 2024/03/18, 03/28 2025/03/23

*加筆再掲の弁
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*年輪年代鑑定の奇蹟
 木材年輪「年代鑑定」で、遺物が三世紀のものと特定されたというのも、画面で見る限り確定的でなく、テレビドラマなら「一致率」何㌫というところが、数字は出せないのだろう。して見ると、朗々たる箸墓古墳の年代特定は精々臆測である。
 何しろ、当時、キリスト教起源の「世紀」など存在しなかったから、古墳の年代特定が、「三世紀」にと規定されるというのは、一種怪談と聞こえかねないのである。
 かくのごとく巨費を投じた「でっち上げ」は、積年の赤字財政に喘ぐわが国で、貴重な国費を割いて巨費を投じた造作であり、途方も無い浪費と見える。これもまた、各地で地道な発掘を展開している方達に、大変失礼である。

*華麗なる「邪馬台国」~ 幻想の太古
 華麗に呈示された「女王共立」は年代物のお粗末な作り話で、粗雑である。なぜ、各国代表団が、史料に言及のない、おそろいのお仕着せ/制服か、意図不明である。いや、画面に示された卑弥呼の衣装、髪型は、文献に根拠のない幻想で、年齢設定も虚構である。どんな「専門家」の時代考証によるものか、公開頂きたいものである。

*喪われた出版物の伝統
 制作費は「透明化」していただきたいものである。
 往年のNHK特番は、付随出版物が豊富で、大判図版共々大変勉強になったが、近来、手抜かれて大変不満である。公共放送出版物の伝統は「荒城の月」になったのか。

*貴人参集の戯画
 「専門家」のご意見がないので、各国国主が、どこからどのようにして参集したか分からない。月に一度の参賀は必須だが、街道未整備で馬車交通が存在しないから貴人も徒歩往来であり、他人事ながらまことにご苦労である。

*壮大な「纏向」大国
 いや、三、四世紀に、各国邑(村落国家)が北九州に集中との想定なら別だが、当番組が示唆する壮大な「纏向」起点の長距離統治は、文書通信がなく街道未整備で、どうやって「古代国家」を維持したのか。

*生けるレジェンド
 古人曰く、「ローマは、一日にして成らず」社会の基礎構造(インフラストラクチャー。同時代のローマ帝国の制度を言うもの)が、皆目未形成では、「纏向」大国は、画餅/紙風船/張子の虎/砂上の楼閣/逃げ水と言われても、一切反論できないのではないか。一部で揶揄されているように、そこには、生ける「レジェンド」であった「纏向遺跡国家」が存在していたのか。

*幻想の雒陽首都
 それとも、以上は一視聴者の早合点で、堂々と映像展開されたのは「邪馬台国」で無く、曹魏雒陽首都であろうか。誤解を誘う無惨な手法では無いか。
 曹魏創業当時の雒陽は、曹魏文帝曹丕の再建活動があっても後漢末の廃都/破壊の跡を残していた。時代考証するなら、三国鼎立の戦時下に明帝曹叡のご乱行で、至る所で新王宮建設が進んでいたはずである。現場には官吏である「お役人」が多数駆り出されて、「首都」は、混乱していたはずである。明帝没後、新王宮建設は撤回されたが、画面で示された整然たる有り様は不審である。
 この画餅は、当番組の主題確保に、どう貢献しているのだろうか

*「タイムカプセル」詐称
 土中から発掘された遺物を「タイムカプセル収蔵」と放言しているが、気密恒温状態でない「タイムカプセル」とは物知らずの素人の妄想と見える。出土物は、泥中で大気中の酸素との接触が、少なかったと見えるに過ぎない。認識不足(Ignorance)は回復不能、つまり、致命的(fatal)である。

                                未完

新・私の本棚 NHKBS「古代史ミステリー 第1集 邪馬台国の謎に迫る」 4/10 更新

私の見方 ☆☆☆☆☆ 果てし無い浪費の泥沼 底なしのてんてこ舞い 稚拙な弥縫の流沙 2024/03/18, 03/28 2025/03/23

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。

*暴露されたタイムカプセル
 せめて、「纏向遺跡」で実例のあった大型建物遺跡の一隅の土坑の泥の底であれば、内部対流してなかったろうから、一千八百年を経ても、ほとんど外気を呼吸していなかったろうが、ここにずばり開封された。
 密閉と見えても、温度気圧の変動により呼吸して、周辺に纏わる大気の吸排は否定できない。一日の呼吸が極小でも、一千八百年間の呼吸の積み重ねは、影響無しとは言い切れない。今回の出土遺物は、表層近くと見えるし、遺物を密閉容器に収めた様子は見えない。まことに暢気である。

*纏向遺物の悲劇
 関係者は忘れたかったろうが、NHKオンデマンドで公開の「特番」には、纏向遺跡発掘で貴重な時代遺物である大量の桃種を埋蔵位置/深度を特定しないまま、貴重な付着物を無雑作に一括洗浄しているのが記録されている。
 そのため、多年の積層か一度ないしは数度の祭礼で一括投棄されたか判別できず、遺物ごとの時代鑑定は一切不明である。それにしても、出土資料の管理が等閑(なおざり)なのは勿体ない。考古学の遺物記録鉄則を失念した暢気なものである。後年高度な化学分析に供しても、遺物史料の信頼性に対する不信を拭いきれない。

*華麗な女王像
 女王は、共立後徐々に権力を掌握したと云うが、自身の領域を持たない軍事的、経済的に無力なものが「権力」を揮えるわけがない確実なのは、調整役である。肝心の「魏志倭人伝」に女王「権力」など書かれていない。関係者の雨の夜の創造物か。諸国王と言うがそのようなことは書かれていない。

 当番組は、「女王」隣席の御前会議をでっち上げていて、史料無視で話がボロボロである。頑固/堅実な考古学は崩壊したのか。

*「狗奴国」幻像
 狗奴国反抗で番組の示唆する宏大領域が内戦状態に陥るとは信じられない。
 当番組は前方後方墳を根拠に、狗奴国が東方まで展開した巨大国家との奇説に組みしているが、文献根拠が提示されていない臆測である。

 確実なのは、墓制が異なれば葬祭儀礼が異なり他と和しないだけである。何かの流行で葬祭儀礼が「革新」され、銅鐸が一気に廃棄され、巨大墳丘墓が棄却されたと無責任に言うが、無教養で無知なものの放言である。

 葬祭儀礼は、古代国家の「伝統」根幹であり、また、現在の権力者の権力の根幹である。子々孫々の維持に全知全霊を傾けるから、祖礼を「流行」で廃棄するなど有り得ない。無教養で無知なものは、ことを宗教的とし、果ては迷信と蔑視するが、学界はそのような暴言を早速撲滅していると信じたい。

*長征幻想
 狗奴国との間に、「日本列島」を広範囲に蓋う抗争など不可能である。一部異説陣営が、古代の世界観の「乱」を望んで、恣意に満ちた解釈に勤(いそ)しんでいる。誰が考えても、道なき道を延々と徒歩移動し、野営を重ねた果てに果敢な武闘(campaign)は、とても持続できないものである。
 幸運に恵まれて遠征先で勝利したら、来た道を米俵と傷病兵を担いで延々と帰国するのだろうか。死者がいなくなって農業生産が害される。凱旋しても、遠路を担いで還った米俵など、ほとんど腹の足しにならない。もし、負け戦だったら、悲惨の極みである。敗軍の将は、斬首ものである。
 水田稲作で、春秋の植え付け、収穫時は共同作業できたが、夏場は各戸の人力頼りであるから、農繁期の徴兵軍事行動は自滅行為であり、地域の指導者は、「大乱」に消極的であったはずである。

                                未完

新・私の本棚 NHKBS「古代史ミステリー 第1集 邪馬台国の謎に迫る」 5/10 更新

私の見方 ☆☆☆☆☆ 果てし無い浪費の泥沼 底なしのてんてこ舞い 稚拙な弥縫の流沙 2024/03/18, 03/28 2025/03/23

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。

*「掠奪史観」汚染か
 要するに、近隣との水争い、漁場争いには、生活改善の意義があるが、食糧掠奪は子供のお遊びでも有り得ない。と言うのは、NHK番組司会役の「歴史家」磯田道史氏が、不正規発言で掠奪史観を持ち込んだが、「門外漢」が、古代掠奪国家と暴言を物しても時代と地域を理解していない暴言でしかない。
 一級史料「魏志倭人伝」に一切書かれていない広域の争いは、当時の「日本列島」では「無かった」のである。そもそも、調整役として女王を擁立したのは、「時の氏神」の元で、よろず談合しようという賢明な策であり、一時の抗争が収まれば不戦の誓いが復活したはずである。

 この地域、この古代で、他国侵略、食糧掠奪が、物々しい割に成果が望めないのは、先に述べた展開の後日談を考えればわかる。敵もさるもの、次回の侵略は手ひどく報いられるのは、日を見るより明らかである。

 掠奪に国家の礎を置く暴行は、天に裁かれる。「汝盗むなかれ」は、戒律の始まりと言える。古代人の叡知を侮るものは古代人にあざ笑われる。
 いや、延々と戒めるのは、他ならぬNHKの古代史教養番組が、三世紀における掠奪世界観/倫理観を高々と謳い上げて制止されていないからである。

*隔壁無き「国邑」
 史料に戻ると、「倭人伝」は、「倭人」の「国邑」村落国家が中原の常識に反して、隔壁の無い「安息」境と賛嘆している。水壕は「けもの除け」に過ぎず、実戦となれば、掠奪者の工兵が梯子を組んで渡るので、防備するには、三匹の子豚の童話で言う石壁が必要である。

*「青谷上寺地」難民キャンプ説
 青谷上寺地に、数世紀とも見える期間に大陸人員が居住したとして、それは、時間的に、量的にどの程度かということである。二人渡来しただけでも、世代がつながれば、計算上は百人を超える集団に発展するのである。
 どこからにしろ、部族ぐるみの到来であるから、先祖代々の葬祭儀礼を持ち込み、墓所には墓誌を埋めて金文史料が出土する。中原には中原の葬祭儀礼があるから、逃亡先でも、蛮夷に同化せず、「文化」を堅持したに違いない。
 下級民でも所帯道具一式に加え、当然、筆墨、算木に基づく度量衡や暦制も持参したに違いない。でないと、氏族が維持できず、もっての外の親不孝になるのである。そうした伝統維持が、何も遺っていないはずがない。
 言うまでもないが、氏姓、本籍は、何があっても棄てられないのである。

*中国権威者の妄言~百年の恥辱
 王勇老師は、古代中国で、民衆が戦乱から東に退避したと決めつけているが、何かの錯覚であろう。難民は、地域社会丸ごとと見るべきである。先ずは、現住所から系譜、戸籍、家財、財貨を抱えて、一族諸共、四方に逃散するはずであり、西は、流沙世界であるから逃げられず、北は、匈奴領域であるから逃げられず、大勢は、難なく南下したはずである。

 東方は、華夏文明の圏外であり、山島半島岸辺から見て、目前の海中山島である朝鮮半島中南部は、筏や小舟で渡れるというものの、現地は街道も無い荒れ地で徒歩移動であり、さらに、東夷の地に至るには小舟で島伝いに渡海する必要があるから、一族郎党が、家財道具一式を抱えて渡来するのは何とも難儀である。以上の推定が御不満であれば実験航海してみることである。

 それにしても、後漢末期の黄巾の乱が平定された三国時代の中原は、曹操が安定化を図っていたから、氏族ぐるみの逃散は鎮静化したはずである。

                                未完

新・私の本棚 NHKBS「古代史ミステリー 第1集 邪馬台国の謎に迫る」 6/10 更新

私の見方 ☆☆☆☆☆ 果てし無い浪費の泥沼 底なしのてんてこ舞い 稚拙な弥縫の流沙 2024/03/18, 03/28 2025/03/23

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。

*根拠なき卑弥呼遣使
 それにしても、卑弥呼が、曹魏に使節を送ったと云う「法螺話」連鎖には恐れ入る。専門家が寄って集(たか)って考証したと言うが、どんな顔で法螺話を募ったのだろうか。いや、別にお顔を拝顔したいと言っているのではないので、SNSはご遠慮申し上げる。

*有り得ない大挙「北伐」
 老師(日本語で言う「先生」)の新説として、東呉の曹魏北伐を云うが記録はない。騎兵部隊を持たない東呉孫権は北伐して天下を取って中原を支配する気などなかった。
 幻想の「赤壁」事件の後日談でも、さっさと撤退した後漢宰相曹操の軍団は、別に追い打ちを掛けられず、悠悠と後漢献帝のもとに凱旋し、荊州平定の戦勝報告を物しているのである。要するに、東呉の軍兵は、騎兵がいないので追撃/侵攻できなかったのである。
 以後、曹魏は、川船を駆使した水軍の訓練をした形跡があるが、東呉が、軍馬を大量に買い付け、騎馬兵団を養成したとは聞かない。いや、そもそも、どこから大量の軍馬を買い付けられるのか、不思議ではある。

 あえて言うなら、曹魏に対する反乱勢力では、西方で騎馬兵を有する弱小「蜀漢」が、関中方面に北伐軍を送り込んだが、曹操、曹丕の二代は、各国の内情を熟知していたから、孫権が北進しても片手業で追い返したのである。いずれの場合も、せいぜい、威嚇して降服を促すだけであり、遠征して征服することなど論外である。

*有り得ない「四国」鼎立
 それにしても、戴燕教授なる老師は、どんな史料を見て発言したのだろうか。三世紀、「倭」が、第四勢力気取りで魏、呉、蜀の海上紛争に介入したというのは、日本人はだしの「倭自大」である。かくも保身されているのは、何が怖かったのだろうか。もちろん、蜀の海上作戦など、勘違いであろう。
 いや、謝礼を振りかざされた両老師の発言の断片から、当番組制作陣が、番組展開に都合の良い部分だけを見せている可能性は否定できない。見えていないものは分からない。
 画期的な大量の難民が発生したのは、西晋末期の亡国時である。亡国の洛陽官人一族が黄海を越えて百済に渡来し、文書行政を後進の百済に齎した。

*魏帝幻想
 ここで、公共放送の制作陣は、寄って集(たか)って大層な対話劇/法螺話を打ち上げているが、要するに、何の裏付けも無い「虚構」である。堂々と喚いている魏帝は、明帝曹叡であろうが、金印を手配したものの、サッサと逝去したから、以後は、全て沙汰止みになったはずである。史料に照らして時代考証していないのは、お粗末である。

*史料無視の咎め
 復習すると、当時、信頼するに足る史料は、唯一「魏志倭人伝」だけである。字数は、二千字程度であるが、三世紀当時、西晋の高官などの読書人が精読し、確認したから、信頼するに足るのである。
 国内史学の見地で気に入らない点があっても、それは、「二千年後生の無教養な東夷」のわがままに過ぎない。まして、「倭人伝」に書かれていない創作を「天こ盛り」するのは、史学の道を、はなから、大きく外れていると思量するものである。
 NHKが、このような無思慮な創作/改竄を助長するのは、まことに勿体ないことである。

                                未完

新・私の本棚 NHKBS「古代史ミステリー 第1集 邪馬台国の謎に迫る」 7/10 更新

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*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。

*幻の卑弥呼朝廷
 それにしても、提示された卑弥呼朝廷はウソの固まりである。女王となる以前は、しばしば、人々の諮問に応じて神意を託宣していたとされているが、女王となって以後、卑弥呼は「滅多に臨朝しなかった」と「倭人伝」に明記されているから、御簾も無しに素顔をさらす胡座(あぐら)の女性は何者か、不明である。番組は、勝手に各国に王がいたとしているが「国主」の誤読であろう。天辺の「点」の有無で大違いである。「国邑」に王がいて王統が継承されていたのは、限られた大国だけである。ちなみに女王は王では無い。

 このような立派な「再現」の根拠となる朝廷遺跡が発掘されたと聞かない。

*「前方後円墳」の手前味噌
 前方後円墳(一種の熱病か)は、三世紀から一世風靡したとしているが、それは、無理の固まりである。通説では、前方後円墳熱は、吉備で発症し、纏向に蔓延/波及したとしているのではないか。
 大規模な墳丘墓の大規模な施工には、先ずは、大勢の技術者が必要であり、技術者は、天から降ってくるものでもないし、地から生えるものでもないから、何年という時間をかけて、文化/文明を教え込んで、読み書き計算から始まって、工学原理の伝授まで養成しなければならないのである。そのようにして、丹精して養成した工人たちは、実は、「古代国家」の国の礎/大黒柱であり、安売りしたとは思えない。
 いや、三世句後半に、突然、纏向で、造墓組織が蹶起しても、「日本列島」各地の徹底には、多数の部隊が並行して各地で動作しないと実行不能である。
 「人、物、金」、どこから降って湧いたのだろうか。各地で、指示通りに墳墓を施工させるのに、どんな威嚇手段を執ったのだろうか。不思議であるが、まだ、具体的な手法は聞いていない。すくなくとも、国王の詔勅が届かなければ、各地方の君主は、動かないはずなのである。

 いや、そのような難癖は、卑弥呼没後に(寄って集って無理やりに)直結させるから手ひどく突っ込まれるのであり、箸墓が、伝統的な時代比定で、四世紀とされ、以下、徐々に各地に技術が波及して、二世紀かけて、土木技術が伝世普及したというなら、納得させられるのだが、当番組は、「新説」正当化に、あまりに性急である。

*「歴博教授」綺譚
 素人目にも明らかなように、「歴博教授」が過去のNHK番組で愛好した性急な論法は、今回は「根拠の無い虚構」として棄却されたと見える。今回は、なぜか陰に隠れているが、三世紀「倭人伝」記事の否定に唐詩の大家李白の名作を持ち出す場違いな論断は、今となっては、歴博の風土が生んだ「レジェンド」の児戯として、むしろ懐かしいのである。氏が、NHK番組での失態で失職していないのを見て安堵したものである。

*「倭の五王」と「巨大墳丘墓」の時代/地域考証談議
 冷静に見れば分かるように、『中国史書に記録された中国南朝に遣使した「倭の五王」の文献上の偉業』と『現存する巨大な墳丘墓の遺跡/遺物の考古学』は、それぞれ独立して存在するのであり、「後世人の恣意でくくりつけてはならない」のである。どちらの偉業も、「日本書紀」に明記されていないので、「専門家」のご意見次第でどうとでも「ゴロゴロ」と転がるのである。

                                未完

新・私の本棚 NHKBS「古代史ミステリー 第1集 邪馬台国の謎に迫る」 8/10 更新

私の見方 ☆☆☆☆☆ 果てし無い浪費の泥沼 底なしのてんてこ舞い 稚拙な弥縫の流沙 2024/03/18, 03/28 2025/03/23

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。

*「狗奴国」飛翔
 いや、いつの間にか、狗奴国は東方に広く展開していたことになっていて、たいした法螺話と思うのである。誰も、不思議に思わなかったのだろうか。どこの誰の指示によるものか知らないが、ちゃんと制作過程の議事録と指示書を取っておかないと、後世責任追及するときに、「誰が決定して、なぜこうなったのか、記憶にありません」で済まされると危惧するのである。となると、具体的な制作担当者の責任で逃げるのではないか。まさか、登場した俳優の責任では無いだろうが。

*安直な戦闘シーン
 もちろん、人件費がかかっていると見える戦闘シーンは、時代錯誤そのものである。戦国ものの流用ではないとしても、さすがにいずれかのドラマの流用なのだろうが、まことにお粗末である。それにしても、これほど多数の兵隊が動員できたら、勝利を争わず和平/妥協すれば、多額の戦費が霧散し、兵は、農事に帰れるから、国は富むのである。

*無意味な鉄鏃
 古代の実戦では、鉄鏃など、ほとんど無意味である。大抵の矢は的を外れるものであるから、数多く撃って当てるのが「勝ち」である。
 一戦を交えた後、死者の身体に食い込んだもの以外は、せっせと、矢を拾い集めたはずである。周知であるが、山野で拾い集めた石塊をたたき割って作られる石鏃の殺傷能力は、しばしば粗製の鉄鏃を越え、ありふれた石鏃矢は農閑期の内職で造れるから、格段に安上がりで豊作である。要は、数多く打てば当たるのであり、別に殺さなくても、手足に傷を負わせれば、敵は闘志を喪う。三世紀時点で鋼鉄甲冑は無く石鏃で十分とも言える。

 戦が負け戦で終われば、さっさと撤退するから、石矢は、ばらまかれたままで早晩忘れ去られたのである。

*渡来技術談義
 珍しく健全な常識を備えた方が登場して、墳墓施工は渡来技術起源としていて、奈良盆地内でも、特異地点である「纏向」遺跡で忽然と開始したと云うが、当時、そのような兆し/契機はない。いや、三世紀当時、纏向は「生きた国邑」であり、亡霊の徘徊する「遺跡」にはなっていなかった。もちろん、周辺の「唐古鍵」などは、纏向遺跡の一部ではない。

*伝統の版築工法
 ちなみに、「版築」工法は、遅くとも秦代以来の基礎技術/業界の常識であり、楽浪郡、帯方郡にも、土壁/石垣を備えた築城の技術として伝わっていたはずである。辺境に、郡治/郡太守のお城を築くには、不可欠な技術であるから、遅くとも、秦始皇帝が長城の東端の守りとして遼東郡を築いた時点には、東夷の境地にまで伝来していたはずである。つまり、遼東郡に、築城工兵部隊を常駐させていたはずである。何しろ、始皇帝が設けた官道は、二千年を超えた今日でも、版築の姿をとどめているのである。

 ついでに言うと、雒陽付近の土壌は黄土の一部と見え、適度の粘り気のあるものであり、また、特に多雨地帯でも無いので、内部に草の花粉などが少ないので、突き固めの版築が、既に千年近く施工されていたのである。
 知らないでいた専門家は、誇らしく「新説」を語っているが、後世に残る「迷言」とされるだけである。
 ちなみに、国内で眼に付くのは、戦国時代の築城術であり、整地/地固めの工程と石垣積みに土壁を築くものであり、長年継承された土木技術と見える。

                                未完

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