YouTube著作権騒動 Kleiber and Zeffirell "Otello” sounds and furies
2019/09/19
今回の騒動は、一見新手のように見えるが、実は、根っこは共通している問題である。
当方が公開している下記動画は、NHKで放送された動画(当然、音声入り)を引用しているものなので、正当な著作権者から問い合わせがあれば、いろいろ審査を要することは事実である。
但し、当方は、このような部分的な引用公開は、出典を明示している限り、著作権上許容されているとほぼ確信しているので、特に不安は感じていないものである。正当な著作権者が、当方の公開に対して何らかの権利行使を望むのであれば、当方の足の伸ばせる地域の知財権法廷の判断を仰ぐ所存である。
動画の URL https://youtu.be/MaVbtvBC180
In Memoriam: Kleibers Otello Atto 1 Esultate! スカラ座来日公演 Zeffirell 1981/09/02 オテロ
言うまでもないが、ここでは、アリゴ・ボイトが台本を書き、ジュゼッペ・ヴェルディが作曲した音楽著作物「オテロ」の著作権を論じているのではない。同著作物は、著作権者の没後所定の年数を歴ているので、いわゆる公有著作物となっている。ここで論じられているのは、国内著作権法で言う著作隣接権、言うならば、演奏に対する著作権である。
同権利を、ここでは便宜上「著作権」と呼ぶが、NHKが著作権を有しているというのは、番組を放送した時点で、著作権が発生したという意味であり、スカラ座が、再放送等を制約するのは、厳密には、NHKとの間で、著作権譲渡などの契約があったものと推定するのであり、これは別に、非合法でも不合理でもないので、そうであればそのように、公共放送であるNHKは、受信料を支払っている視聴者に対して、明確に表明すべきだと考えるだけである。
*YouTubeの態度
これに対して、YouTubeは、The Orchard Music (The Orchard Music Opera d'Oro の代理 とのみ表示。以下、同団体)なる正体不明の組織が、当方の動画が同団体の著作権を侵害している(との趣旨に読み取れる)ので、その公開に制約を加えるとの申し立てがあり、YouTubeの制度上、当方の異議を申立人が認めない限り、当方の権利を制約するとの通告である。
因みに、諄々と理を説いた異議は、何の説明もなく拒絶されたのである。また、かねてのお約束とはいえ、YouTubeは、一切、仲裁、斡旋の労を執らないのである。過去、仕方なく、英文で理を説いた例があるが、黙って引き下がった「勝」はいくつかあるが、不明・錯誤をわびてきた例は皆無である。また、YouTubeが、子供のお使い以上の何かをしたことも皆無である。いくら、無料で利用させていただいているとは言え、これは、かさねがさねあんまりである。
*申立人の身元不明
同団体が正体不明というのは、まずは、同団体の実態が開示されていないからである。特に重大なのは、同団体が、適法に当該著作物の著作権を有しているとの確認がされていないことである。YouTubeは、申立人の身元調査をしていないので、当方は確認のしようがない。
*申立人の権利不明 立証義務不全
先に述べたように、NHKによって放送された番組(以下、同番組と呼ぶ)の著作権はNHKが保有している。念押しであるが、同番組で放送差つれた公演を制作したスカラ座が、NHKに対して、同番組の一回限りの放送を許諾して、以後の再放送や出版などを許諾していない可能性はある。同番組が、一切再放送等されていないのは、そのような権利関係の契約が成立しているものと思われる。
スカラ座が、同団体に対して同番組をライセンス許諾して、特定の国/地域で適法に販売されているという可能性自体は、否定できないが、寡聞にして、いずれの国/地域であろうと、スカラ座によって同番組の販売が許諾されたとの報道は聞かない。
それとは、別次元の話だが、NHKが視聴者の受信料で作成した著作物を、スカラ座が意のままに流通するのを制約できないとしたら、公共放送として重大な背信行為である。
たま、ある程度事情に通じている音楽ファンとして述べると、今回の題材のようなオペラ上演については、演出家フランコ・ゼッフィレリと指揮者カルロス・クライバーに、販売可否を左右する権限が認められていて、特に、クライバーは、極度に自演の販売許可を制限していたから、同番組を販売することを許諾したとは信じられないのである。
*申立人の立証義務
少なくとも、同団体が、当方の動画著作者としての活動に制約を加えるという、刑事告発に類する申し立てを行う以上、当方には、同団体が同番組に対して正当な権利を有していて、その権利を根拠に当方の動画公開に対して制約を加える権利を行使する、との証明を提示することを要求する権利はあるのではないか。つまり、契約締結していると堂々と宣言してくれれば良いのであり、当方は、別に契約書自体を見たいとは言わない。
*YouTubeの怠慢
本来、YouTubeは、申立人が当該著作狗物に対して、正当な権利を有しているか確認する義務があると考えるが、YouYTubeは、そのような検証をしていないので、一私人である当方は当否の確認のしようがない。
*著作物の実態不明
次に、著作物の実態である。本当に、同団体は、当方の公開動画と重なるような動画商品を販売しているのであろうか。過分にして、そのような商品が流通しているとは聞かない。
当方の知る限り、同公演のFM中継録音を、不法に商品化している事例があると聞いたことがある。いわゆる海賊版であるが、今回の事例では、原版が適法に商品化されていないから、ブートレグとでも言うのだろうか。これは、大多数の国/地域で不法行為であることは言うまでもない。
*著作権の正当性不明
いずれにしろ、正当な著作権を有しないものは、著作権を主張することはできないのは自明であるから、そのような不法行為が冒されてないのであれば、自身で疑惑を払拭すべきである。一民間人としては、営利行為を営んでいる者に対して、そのような主張をする権利はあると見なすのである。ここに述べている全体は、本来は、YouTubeの責務である。
*映像著作物に対する権利比定
言いたいのは、同番組のように、映像と音声が、本来不可分の一体となっている著作物の音声部分のみに関して権利を有していることを根拠に、映像全体に著作権を主張することは「適法か」という疑念である。
音声のみを販売する商品と音声を含む映像を販売する商品は、別種の著作物と見なされている以上、前者の権利で後者を制約するのは、不法行為ではないかと見るものである。また、音声を取り除いたサイレント動画は、商品加地かないのは言うまでもない。両者が、権利輻輳しないためには、両者は、別個の独立した著作物であり、相互不可侵なであることを共通の認識とする必要があり、現に、そのように法的に運用されていると見るものである。
もちろん、同団体が、同番組に対する権利を有さず、音声部分だけのライセンスの許諾を受けた契約に於いて、同国機/地域に限ったとしても、同音声を組み込んだ映像作品の商品化を排除する排他的な特権を与えられているのなら、それは、適法であるが、スカラ座がそのような自身の事業展開に著しく不利な契約を結ぶとは、とてもとても思えないのである。また、同団体とスカラ座の音源ライセンス契約に於いて、同番組全体に関する排他的な権利について言及されていないとしても、同団体は、同番組全体のライセンス契約を締結する選択肢を否定し、映像部分に関する権利を放棄し、権利範囲を限定・減縮して安価な契約を締結したのであるから、契約締結後に、契約の抜け道として、既に放棄した権利を回収することはできないと見るべきである。
ということで。安易な言い逃れは排除されているので、同団体は、是非、堂々と自身に投げかけられた疑惑を注いでもらいたいものである。
*独白
ここは独り言であるが、何しろ、「敵」の論拠が不明確だから、当方も、反論に苦労するのである。当方は、公開動画および添付した説明記事に於いて、著作物の由来を明らかにしているのに、敵は何も表明しないのは、不公平極まりないと思うのである。正義(Justcioe)の基本は公平(Just)ではないのだろうか。
*YouTubeの著作権保護使命
ということで、このたびも、大変、無駄で不愉快な時間と労力を浪費させられているのである。
「無駄で不愉快」と言うのは、YouTube運営チームが、クラシック音楽分野の動画著作権について、責任ある判断をするのに不可欠な、職業的な法的知識を持たず、また、専門家の助言も得ず、ただひたすら「音源管理者」の勝手で、不明確な主張を丸呑みにして、公開制限などの不愉快で不法な措置を採ることである。
特に、本質的に海賊版販売の疑惑が避けられない分野での「申し立て」に対して、十分な検証を怠っているのは、著作権保護の精神に反しているのではないかと苦言を呈したい。
そして、更に困ったことに、毎回、諄々と法的な間違いを説いても、YouTUbe関係者は、一向に聞く耳を持たないと言うことである。例えば、音源管理者の主張は、不正確ではないかと信ずるに足る根拠をがあるから反論するとの選択肢は依然としてない。せめて、正当な反論を取り次ぐ義務はあるのではないか。 毎度の徒労とは言え、不法な、つまり、法律に違反した手続きについて、黙っていることはできないので、ここに「騒動」の新作を公開するのである。
追記:
因みに、当動画は初出ではなく、旧作を画質改善した再公開である。前回公開に対して何の申し立てもなく、今回唐突に申し立てされる理由は不明である。
なお、テレビ画像の音声部とFM放送された音声は時間軸不一致であり、当動画の程度の長さでも、明らかにずれが生じる。同一と認定した根拠が一段と希薄である。また、テレビ放送の音声部と当動画の音声部が一致するというのであれば、それは、音源の特定に失敗しているのである。
最後になったが、当方は、YouTubeにおける動画公開に対して一切収益化を行っていないので、今回の措置は、当方に対して経済的に何の影響もない。著作権管理における不法行為に対して憤っているのである。
以上